水の話

喉が痛い。
埃をたくさん吸ったせいだ。昨日から痛かった気もする。でもよく覚えていない。
腫れているんだろうか。
息がつまる。息を吸うと酷く痛むし、吐いても痛む。
呼吸ができない。
まずい。
本当に息が出来ない。
違う。喉が渇いているんだ。カラカラだ。何か飲まないと。早く。


飲み物を求めて素早く辺りを見回す。其れらしきものは見当たらない。


やばい。


確かさっき泉のそばを通ったはずだ。
来た道を全速力で駆け戻る。
普段走ったりしないからすぐに息が上がる。
肺が酸素を求めているのがわかる。しかしそれは喉で止められて、肺に届く事はない。
それでも走る。とにかく急がないと本当に死ぬ。


こんな事なら、普段からちゃんと鍛えておけば良かった。自分の足の遅さを呪う。
でも普段は絶対に運動しようなんて思わない。
苦しむと必ず後悔するけど、その苦しみが無くなればすぐに忘れる。
人間ってそういうものだ。
毎日よく注意して生きていない限りは。


嗚呼、やっと泉が見えた。でもなんで泉に向かってるんだっけ。
そうそう、火事だ。
森が燃えているんだった。
だから僕は泉に飛び込んで炎をやり過ごす。森から出る暇は無いから。
この泉、干上がったりしないだろうな。


僕は勢い良く泉に飛び込んだ。