2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

かつて誰もが

外へ出ると、雨が降り始めていた。傘たてに群生する傘の中から、僕は自分の傘を探す。ありふれた黒い傘はいくつもあって、なかなか自分のが見つからない。これは違う。これも違う。似てるけどやっぱり違う。がさがさやっているうちに、自分の傘がどんなだっ…

目的の必然性

「なぜ生きるんですか?」と僕は訊ねた。カウンセラは「やっぱり」という顔をして、ノートに何か書き込んだ。僕は僕で、内心「やっぱり」と思っていた。 答えられるワケが無い。答えたつもりになっている大人たちも、たいてい的外れなことばかり言っている。…

キャンタンダスタン

「足りない」と「要らない」と「うるさい」と「ごめんなさい」と「嫌だ」と「そうじゃない」と「お前になんか分かるもんか」と「僕に分かるワケないだろう」と「 」が、回っている。粉砕され、掻き混ぜられ、凝縮されて。出来上がった何かが僕の内側から滲む…

まちぼうけ、にぶんのいち

またね、って左手振ったアイツは二度と帰ってこなかった。何十回も太陽が沈んで、何十回も月が昇る。雲は流れたし、雨も降った。それでもアイツは帰ってこなかった。 僕は「またね」を信じたくって、ずっとずっと待ち続けた。アイツが戻ったら見せてやろうと…

殺人鬼は泣く

他者に何かを要求する自分を嫌い、隠れて努力する彼ら。自らを切り刻み、押し黙っている彼ら。そんな彼らを効率よく見つけ出すには……彼らに存在を主張させればいい。 「私は一生懸命隠れて努力してますよ!」 そう言った途端、彼らは死ぬだろう。だって、彼…

思い出した

かつて、あるひとつの真剣な償いは、当然のように「当付け」と呼ばれたのだ。我々はそのことを忘れてはいけない。償いとは「言い訳」を捨てることだ。

それもある種の自己特別視

オール・イコール・ナッスィング(All=Nothing)なら、ただひとつ例外を作ればいい。オール(All)でなくなればいい。じゃあ、何を切る? もちろん私だ。全てを愛し生きるために、私は私を切り捨てる。私は私のために生きない。誰かを愛するがゆえに、誰か…

部屋と声の妄想と私(3000字超え)

これは僕の妄想だろう。でなければ、くだらない思い込みか……ひょっとすると、単なるホラ話かも知れない。本当のところは、僕にもよく分からない。いや、僕には、よく分からない。何が本当で何が嘘なのか、判断できなくなってしまったから。僕は僕を「僕」と…

影と話すこと

バスの座席に座って本を読んでいると、視界の端でチラつく影が気になった。文字を追っていた目で今度は影を追い、影の持ち主を辿ってみる。斜め前のおじさんだ。片手はつり革に。空いた手は、腕を掻いたり、髪を撫で付けたり、口元へ当てられたり。落ち着き…