キャンタンダスタン

 「足りない」と「要らない」と「うるさい」と「ごめんなさい」と「嫌だ」と「そうじゃない」と「お前になんか分かるもんか」と「僕に分かるワケないだろう」と「   」が、回っている。粉砕され、掻き混ぜられ、凝縮されて。出来上がった何かが僕の内側から滲む。その音を聴いていると視界が霞む。世界が僕の居場所を盗む。それでも何とか言葉を挟む。終わらない物語はまだ始まってなどいない。僕らはただ、本を開き、文字を呑み込んで、本を閉じる。栞を挟む必要もない。だってそこには何もない。何もない場所に線を引く。まっすぐまっすぐ。まっすぐ進んで気が向いたらUターン。戻る場所なんてないくせに。自分を囲んだつもりになって、その実自分だけはみ出している。そんな風にみんな生きている。生きているフリをして笑っている。声も出さずに。シタシタ笑う。