枕とシロップと空白の時間

最近、the pillowsやsyrup 16gを聴くと、泣いてしまいたくなることがある。そういう「泣いてしまいたい」気分っていうのは、僕にとってとても懐かしいもので、その懐かしさからまた泣いてしまいたい気分が生まれてくる。心臓の横の、胸の真ん中の、ちょうど…

働くということ

シャツにアイロンをかけた。スーツにブラシをかけて、鞄の埃も払った。明日から僕は社会人になる。 「社会人」という言葉で指されるものが具体的にどういうものなのか、僕は良く知らない。社会人としてのマナーや常識といったものも、おそらく知らないだろう…

魔女狩りの正しさとは

些細なこと――扉の閉め方やカップの置き方、ちょっとした会話の調子、特に必要でもない返事がなかったことなんかで「え、この人怒ってる」と思ってしまう。そうして、怒らせるようなことをした覚えがなくても、「あれがいけなかったんじゃないか」「あの時あ…

ぐったり

自分が弱っていることくらいわかる。けれど、どうすればいいのか分からない。やらなければいけないこと、やってはいけないこと、「いけない」ことが多すぎてどうバランスをとればいいのかがわからない。何が優先? 何から、どのくらいやればいいの? やらな…

生きてます。

生きてますよ。生きてるんですよ、僕らだってね。何の意味も根拠もないような人生を、それでもそれなりに一生懸命やり過ごしているワケですよ。それをね、鼻で笑う権利が、いったいどこの誰にあるって言うんですかね。アンタらそんなに偉いんですかね。 ふざ…

ホームヘルパー

就職活動中、たまたま同じグループで面接を受けたその学生は、スピーチをやれという課題のトップバッターを務め、面接官をして「スピーチの型としては完璧でした」と言わしめた。「申し上げる」だとか「致しました」だとかって折り目正しい日本語を使いこな…

乳幼児虐待、乳児遺棄について

そうしてしまう「親」への「サポート」を唱えることが理想論であると言うのなら、そういう「親」を「鬼畜だ」とか「責任感がない」とかって罵倒し追い詰めるのは感情論だろう。って、僕は思うんだけど、結局そういう感情論でしか物事を見ていない人は、僕が…

なんにもないんだけど

なんでなんだろう……。

サラミピッツァ

夜明け前。僕は世界に腹を立てる。頼んでもいないピザがおまけつきで配達されるこの世界に。「寒い中ご苦労様です」と僕は言う。ピザ屋のお兄さんは「いえいえ、仕事ですから」と満足げな顔をする。僕はサラミの乗ったピザを食べない。けれどそんなこととは…

なんかもうよくわかりませんが。

なんなんだ。なんでみんなそんなに幸せなんだ。なんでそんなに幸せを撒き散らして幸せそうにしているんだ。僕のささやかな安息は、彼らの幸せに踏み潰されて蹴飛ばされて哀れまれて、どんどん惨めになっていく。何がいけない? 僕は幸せなんて望んでない。そ…

できることがない

だめだ。なんか色々うまくいかないということを書きたかったのだけれど、それすらもうまくいかなかった。どうしよう?

逃げるってことだ

母親のヒステリックな叱責を浴びながら、何がいけなかったのかもわからないまま、私は馬鹿みたいに謝っている。すみませんごめんなさい私が悪かったです余計なことばっかりして。良かれと思ってやったことが全部母親を逆上させた。「もういやだ」と泣き出し…

でもそれが何になる?

地団駄踏んで怒鳴り散らしたり、パニックを起こして泣き叫んだりするような夢ばかりみている。 壁を引っ掻いて、テーブルを蹴り飛ばして、声を震わせて怒り狂う。そんな私を、周囲の人間は「そんなに腹を立てるべき事柄じゃないよ」という顔で見る。部屋中に…

無力であり続けること

強くなりたかった僕がいる。強さと弱さ、大人と子供、メシアとサタン。僕が求めていたものを、僕は強さと呼んでいたけれど、それはもしかすると誰かが強さと呼んでいるものとはまったく違うものなのかも知れない。と、僕は思う。ただ他に言葉を知らなかった…

裏切り者の子供が生まれます。

「裏切られた気持ちだ」と父親は言ったらしい。後期の単位が12単位しか取れておらず、しかも内2科目は完全に先生のお情けでギリギリ単位を貰っていることと、私のお腹に子供がいることについて。母親は「そう思うのも当然だ」と父親に同意した。これが私の両…

死んだ

妊娠した妹がやってきて、「私の赤ちゃんをみんなで可愛がって欲しいの」と言いながら私のへそにチューブを差し込み、ごぼごぼと腹の中へ水を流し込んできた。あまりの気持ち悪さに「ちょっと何してんのやめてよ!」と叫ぶけれど、妹は「これでお姉ちゃんも…

お人形ごっこしよう。

またか、またなのか、また私は破綻するのか。何の理由も原因もなく。あるいは、もうとっくの昔から始まって(終わり始めて?)いたのかもしれないけれど、けれど。糸が切れて、くたん、と倒れたその冷えきった床の痛みすら切り離してしまうような、あの、空…

お手本のような

新しい次長は見るからにデキる青年、という感じで、自信とプライドを隠そうともせず、見事なまでに仕事にアイデンティファイしていらっしゃる。休みなんてなくて平気だと言う。始発で来て仕込みをしたっていいと言う。仕事の話をしているなら終電なんてなく…

メイソウ

要らないものが手に入り、欲しいものがなくなっていく 降ったりやんだり雨模様 洗濯機を廻しながら 血の滲む枕元

スパイラル―プ

デジャヴ。いつか見たような夢から覚めて、ああなんだっけあの夢、と考える。ついさっきまで見ていた夢もおぼろげにしか思い出せず、結局それが何だったのかよくわからないまま伸びをして起き上がる。今何時だろう? ケータイを開いてみるけれど電源は切って…

手袋が要りそう。

12月だ。色々な人が一年を振り返って反省したり、来年に向けて身の回りを整理したり、今年中に諸々の清算を行おうとしたり、最後に集まって馬鹿騒ぎしようとしたりする。そういう人間たちの活動とは全然関係なく、12月の夜はとても冷たい。どんなに身体を丸…

八方塞がり

かつて生きていたあの物語には、もう戻れないだろうと思う。今なおあの物語の中で生き続けている彼らにとって、僕が物語から外れることは、ある種の裏切りですらあるかも知れない。恩を仇で返すような行為なのかも知れない。あの頃の僕はあの物語がなければ…

アメイジング・グレース

雨だ。地下街での仕事を終えて地上に出ると、結構な勢いで雨が降っていた。傘はない。今の僕にあるのは、ほつれたカバンとびしょぬれの自転車だけだ。店から貰ってきた青いゴミ袋に薄汚れたカバンを突っ込んで、それをさらに自転車の前カゴへ突っ込む。ゴミ…

メモ

青い光と黒い小さな生き物。4番目の部屋――べっこうあめと綿あめの間の網目。5番目の部屋――開きかけの扉、噴水オブジェみたいなかたち。 笑うことについて。笑えることについて。ワラケルについて?

だって眠たかったし

さて、と僕は思う。いつも僕が何かを思うところから始まってしまう気がして、それってちょっと嫌だな、とも思う。結局なにごとかを思わずにいられない。「求職・進路届」とやらの提出が明日までで、ついさっきまでそいつとにらめっこしていた。だってこれ、…

エントロピィ

ちょんぎれて、拡散していく。なんだっけ、これ。誰かいないの?

くつしたを履くこと

新しいくつしたのさらりとした感じが好きだ。新しいタオルのちょっとゴワゴワした感じとは比べ物にならない。くつしたに貼られたラベルをはがして、金属の留め具――名前を知らない――を外す。このゴミをあとで捨てようと思ってそのあたりに置いておくと、たい…

ヒトデナシ

電話がうるさかったのでメールを送って、なんかもうよくわかんない。でも仕方ない、と思う。僕はまた人を崖から突き落としたのかも知れない。でも高さが足りなくて、相手は即死しなかった。笑いながら僕を見てる。そんな感じ。僕は、でも、もうその笑い顔に…

床の上から。

足りない。何かが足りていない。ゆっくりと腐って、死んでいく感じがする。死が死んでいく感じ。遠のいていく、僕の死。死ねないんだ、と僕は言う。死ねないのか、と僕が言う。足りないからだ。何が? どのくらい? あとどれだけあればいい? 答えるものがい…

不要な記憶がデリートできない仕様

あの人が店に来た。「よぉ、お疲れ」なんて言って片手をあげて、相変わらずオールバックでメガネかけて、人の着物姿をニヤニヤ笑いやがる。私はちょっと眉をしかめて「お仕事だから仕方なく着てるんですー!」と憎々しげに言ってみせる。「元気そうやん」と…