なんかもうよくわかりませんが。

 なんなんだ。なんでみんなそんなに幸せなんだ。なんでそんなに幸せを撒き散らして幸せそうにしているんだ。僕のささやかな安息は、彼らの幸せに踏み潰されて蹴飛ばされて哀れまれて、どんどん惨めになっていく。何がいけない? 僕は幸せなんて望んでない。そんなもの願っていない。欲しけりゃいくらでもくれてやる。それでもまだ足りないのか? 今度は何が欲しいんだ。腕か。脚か。頭蓋の中の味噌でもすするか。でも残念ながら僕の頭はもうずいぶん昔に空っぽになっちまって、水の一滴も入ってやしないんだ。あるいは悪夢くらいなら詰まっているかもしれないが、そんなものを詰め込んでいる僕の頭を見たら、またあんたたちはステキなアドバイスをくれるんだろう。120パーセントの善意でもって。

 生まれてくる子供が僕を殺すだろうと僕が考えていたとして、そのどこに不幸がある? そのどこに不安がある? 僕には子育てに対する不安なんかこれっぽっちもないけれど、母親としてのプライドだとか義務感だとかも、やっぱりこれっぽっちもない。プライドや義務感や自覚を抱けないことが、どうして不安を抱いていることになるんだ? 子供なんて放っておいたってちゃんと育つじゃないか。僕は自分の子供を「育て」たりしない。必要なことはする。たぶん、ちゃんと好いてやることもできると思う。けれど、そういうことと、生まれてくる子供が僕を好くかどうかは、全然べつの話じゃないか。子供が何を必要として、何を好むかなんて、僕にはさっぱりわからない。当たり前だろ? だいたい、まだ生まれてもいないんだから。嫌がって生まれて来ないかもしれないじゃないか。だって僕が親なんだゼ?

 って言うとまた、母親になることへの不安、とかって言いだすんだ。産後ならマタニティーブルー。一時的なものなので、深く考えずにリラックスして過ごしましょう! これはこれは、ステキなアドバイスをご親切にどうも。まったく冗談じゃないよ。僕が今一番心配なのは、入院中の食事に出てくるだろう肉類をどう処理したらいいのかってことだ。