2007-01-01から1年間の記事一覧

すべての赤鼻に捧ぐ2

それから私は暖炉に火を入れてウッドチェアに腰掛けた。真っ赤な炎を見つめていると、その炎が私に燃え移るような気がしてくる。私の中には一本のマッチ棒があるのだ。火が点けば数十秒で燃え尽きてしまうような、ごく普通のマッチ棒で、私の中にあるのはそ…

すべての赤鼻に捧ぐ

いつもより早く目が覚めた。昨晩はいつもより早く寝たし、結果的にいつもより長く眠っている。それだけでもう、私の中の「いつも」は空っぽになってしまったみたいだった。朝食にパンを食べて、すこし早めに家を出る。仕事だ。私は駅前のデパ地下で惣菜売り…

またか

人がいなかったワケじゃない。今だって誰かが隣に腰掛けている。けれど、きっと彼らはまたいなくなるのだ。僕はただここにいて、来る人を待ち、去る人を送る。そんな風に生きることに、慣れてしまえば楽かもしれない。こんにちは。さようなら。くり返しくり…

くだらない

土曜から3日連続で発作。日曜の晩は特にひどかった。昨晩も2時を過ぎたあたりから危うい感じだったので、作業を中断してシャワを浴びる。シャワは逆効果だった。 いつ寝たのか知らないが、目が覚めたのは9時。目覚ましを止めた記憶はうっすらとある。しか…

と、××は言った。

「僕は毎晩ソファで丸くなって眠る。すると、肩やら首やら背中やらが痛くなって、足やら腕やらが痺れたりする。だから今日は、仰向けに真っ直ぐ棒のようになって寝てみようと思ったのだ。けれど。 とてもじゃないが眠れやしなかった。僕の中に、木の棒が一本…

ナキウサギ

ウサギは泣いていた。眼を真っ赤にして泣いていた。またか。と、私は思った。最近、毎晩のように誰かが泣きに来るのだ。ウサギはもごもごと口を動かして、何か言った。私には何を言ったかさっぱり分からなかった。ウサギが泣いているからなのか、そもそもウ…

マンデーモーニング

ついに成功したぞ! 素晴らしい! やればできるじゃないか見直したゼ自分! と、櫛を片手に勝ち誇った笑みを浮かべていたのが午前9時。 まだ45分もある。今日は出席できる。どころか、遅刻すらしない。何にって必修の再履科目にだ。お察しのとおり、というか…

糖分の鎮静作用について

ある日子供は泣きました。涙がぼろぼろ零れます。人前で泣くのはみっともない。と、大人たちから言われていましたので、子供はひとりで泣きました。泣き声が外へ漏れないように、ぐっと奥歯を噛み締めて。それでも涙は止まりませんし、呼吸も乱れてしゃくり…

ネヴァエンディング

ここは終わってしまった世界。色々なものが崩れてしまって、瓦礫が散乱している。彼はそこにひとりで存在していた。彼はひとりだったから、もう誰も彼を「彼」と呼ばなかった。きっと彼も終わってしまっているのだろう。もう生きてはいないのだろう。そんな…

スクラップ予備軍

またどこか故障したらしい。世界とうまく繋がれてない。思考が止まる。気持ち悪さを感じないほど。困ったなあ、と言うけれど困ってない。困れてない。

追追伸

そもそも、「ソファ」なんてどこにもなく、ただ「ソファ」でないものと区別するための、「ソファ」という名前があっただけなのでした。

追伸

そしてついにソファからも追い出されてしまったのでした。

私たちに贖罪はない

「存在の否定は、殺人よりも罪が重い」と、誰かは言ったらしい。 私たちが生きるこの世界は、混沌の巣窟だ。色々なものがあり、色々なものがいる。あらゆる存在は生きている。存在を主張し、生を叫び、死を涙しながら箱詰めにされて、はみ出した部分は切り捨…

どくはく

崩れていく。壊されていく。いろんなものが。それを悔しいと思うのが私であるはずなのに、悔しいだけでどうすりゃいいか分からないのもまた私なのだ。分からないまま吐き出して、やあこんにちわと挨拶しよう。マヌケ面で。それで誰かは笑ってくれるのだろう…

僕みたい

だめだ。何か書いていたのに。気がついたら全部消していた。昨日も同じことをしていた気がする。何を書いたのかもう覚えていない。覚えていられないだろうから書いたのに。残ったのは無意味さだけだ。無意味さに意味はない。まるで――。

かつて誰もが

外へ出ると、雨が降り始めていた。傘たてに群生する傘の中から、僕は自分の傘を探す。ありふれた黒い傘はいくつもあって、なかなか自分のが見つからない。これは違う。これも違う。似てるけどやっぱり違う。がさがさやっているうちに、自分の傘がどんなだっ…

目的の必然性

「なぜ生きるんですか?」と僕は訊ねた。カウンセラは「やっぱり」という顔をして、ノートに何か書き込んだ。僕は僕で、内心「やっぱり」と思っていた。 答えられるワケが無い。答えたつもりになっている大人たちも、たいてい的外れなことばかり言っている。…

キャンタンダスタン

「足りない」と「要らない」と「うるさい」と「ごめんなさい」と「嫌だ」と「そうじゃない」と「お前になんか分かるもんか」と「僕に分かるワケないだろう」と「 」が、回っている。粉砕され、掻き混ぜられ、凝縮されて。出来上がった何かが僕の内側から滲む…

まちぼうけ、にぶんのいち

またね、って左手振ったアイツは二度と帰ってこなかった。何十回も太陽が沈んで、何十回も月が昇る。雲は流れたし、雨も降った。それでもアイツは帰ってこなかった。 僕は「またね」を信じたくって、ずっとずっと待ち続けた。アイツが戻ったら見せてやろうと…

殺人鬼は泣く

他者に何かを要求する自分を嫌い、隠れて努力する彼ら。自らを切り刻み、押し黙っている彼ら。そんな彼らを効率よく見つけ出すには……彼らに存在を主張させればいい。 「私は一生懸命隠れて努力してますよ!」 そう言った途端、彼らは死ぬだろう。だって、彼…

思い出した

かつて、あるひとつの真剣な償いは、当然のように「当付け」と呼ばれたのだ。我々はそのことを忘れてはいけない。償いとは「言い訳」を捨てることだ。

それもある種の自己特別視

オール・イコール・ナッスィング(All=Nothing)なら、ただひとつ例外を作ればいい。オール(All)でなくなればいい。じゃあ、何を切る? もちろん私だ。全てを愛し生きるために、私は私を切り捨てる。私は私のために生きない。誰かを愛するがゆえに、誰か…

部屋と声の妄想と私(3000字超え)

これは僕の妄想だろう。でなければ、くだらない思い込みか……ひょっとすると、単なるホラ話かも知れない。本当のところは、僕にもよく分からない。いや、僕には、よく分からない。何が本当で何が嘘なのか、判断できなくなってしまったから。僕は僕を「僕」と…

影と話すこと

バスの座席に座って本を読んでいると、視界の端でチラつく影が気になった。文字を追っていた目で今度は影を追い、影の持ち主を辿ってみる。斜め前のおじさんだ。片手はつり革に。空いた手は、腕を掻いたり、髪を撫で付けたり、口元へ当てられたり。落ち着き…

空箱と、あまり1

空を、飛べばいいのだろうか。空を飛べば、地面にくっついている人間たちは、彼を尊敬するのだろうか。けれど彼も人間で、空を飛ぶのは人間の仕事じゃない。空は人間の場所じゃないのだ。鳥や、雲や、雪や、飛行機の場所。そりゃあ、飛行機の中には人間が入…

うるさい手紙

うるさい。勝手に名前をつけるな。ラベルを貼るな。箱詰めにするな。送料はお幾らですか大きさと重さによりますねなんて当たり前みたいにガムテープで封とかしやがって。宛先はこちらですって伝票まで書いてくれちゃって。そんな風に俺を送り出すな。商品化…

長い針と短い針

違う。違うんだって。今生の別れじゃあるまいし、なんて簡単に言うけどさ。そうじゃないだろ。違うって。繋がり方が変わるんだ。それはもう、今までとはまるっきり違ってしまうことなんだ。毎日顔を合わせていた人間が、年に数回、喫茶店で話すだけの人間に…

譲り合いの精神

またひとつ、消えるだけ。何のコトはない。気にするほどのコトじゃない。だって、最初からいなかったようなものだろう? イェス、って誰か言ってくれない? 言ってくれない。そりゃそうだ。 最近、一日のうち4時間ほどを電車の中で過ごす。涼しいし、座れる…

いときりばさみ

ひとつ。また消えていく。嘘みたいに、でも当たり前のように、静かに突然いなくなる。それはとても哀しいコトであるはずなのに、泣くタイミングすら逃してしまう。だって気付いた時にはもういない。今更泣いても手遅れで、どうすりゃいいのか分からない。後…

お詫び申し上げる

ひょっとして、オオカミ男の話をしたのは、オオカミ少年と掛けてあったんだろうか。だとしたら凄いぞ昨日の自分。私は全然気がつかなかった。 というかそんなコトよりも、ですよ。いい加減謝らなくちゃいけないと思うんです。誰にって、そりゃあ、「Syrup16g…