どくはく

 崩れていく。壊されていく。いろんなものが。それを悔しいと思うのが私であるはずなのに、悔しいだけでどうすりゃいいか分からないのもまた私なのだ。分からないまま吐き出して、やあこんにちわと挨拶しよう。マヌケ面で。それで誰かは笑ってくれるのだろうか。笑っていてほしいヒトは、なぜかいつも、泣いているように見える。雨のせい? 泣いてるのは、誰?
 笑いながら通り過ぎていく人たち。私の肩を叩いて、河原の小石みたいな言葉を吐く。言葉が顔に張り付いて、誰が誰だか分からない。どうしてアンタたちは、同じように笑ったまま、世界を壊していけるんだ? 私は訊いてみたいけれど、誰に訊けばいいのか分からない。諦めて毒を吐く。何とでも言うがいいさ。それがアンタのリアリティなんだろう? どうとでも呼ぶがいいさ。それが私の、アンタにとって必要な、私の役割なんだろう? 望めばいい。願えばいいんだ。私はそれに応えるだけだ。私には実体なんてないのだから。実現したいと思うほどの確かな自己などないのだから。解体しよう。私の……を。
 でも。
 あの人たちが泣いているのを、アンタたちは知ってるのか? あるいは、アンタたちだって、いつか泣いていたかも知れない。笑い続けていると、忘れてしまうのだろうか。私もいつか、忘れるのか? 冗談じゃない。忘れてたまるか。そんなに笑いたいのなら、私を笑えばいいのだ。そんなに壊したいのなら、私を壊せばいいじゃないか。やれるものならやってみろ。と、私は笑い出す。よく晴れた青い空。泣いていた誰かの声も、こんな色をしていたな。