うるさい手紙

 うるさい。勝手に名前をつけるな。ラベルを貼るな。箱詰めにするな。送料はお幾らですか大きさと重さによりますねなんて当たり前みたいにガムテープで封とかしやがって。宛先はこちらですって伝票まで書いてくれちゃって。そんな風に俺を送り出すな。商品化するな。割れ物注意とか書くな。簡易包装にご協力くださいなんて言うくらいならスクラップを生み出すな。飼えなくなったからって海に放すな。外来種がどうのこうの。生態系がどうのこうの。そんなコトとは関係なく一日に何匹野良犬が死んでる? 一日に何人、ヒトが死んでる? どっちだって同じようなものだ。野良じゃなくても、みんな死ぬんだ。飼いならされたほうが悲惨だ。水槽の中でカメは死んだ。でもだからって一緒くたにはされたくない。そうだろ? だって、そうだろ? 分別されて袋に入れられ、回収されればみな同じ、ってか。回収するな。ほっといてくれ。雨ざらしがなんだって言うんだ。表象がなんだって言うんだ。俺に常識がなさ過ぎると言ったのは誰だ? 俺を常識ある人だと言ったのは誰だ? どちらが正しいかなんて分かるワケない。結局どちらも正しいんだろう。だから俺をそんな風に呼ぶな。ヘラヘラ笑って誤魔化して。誤魔化せてねーよって分かってんだよそんなコト。声が出ねぇんだ。眼で訴えろ? ふざけんなって。俺の眼なんか誰が見るよ。野球中継とくだらないバラエティ。俺の眼にはそれ映んねぇんだよ。だから誰も気にしない。気にしないはずなのに。何も訴えないようにって細心の注意を払ったりするような繊細さが俺にあるワケないだろう。勘違いすんな。幻想を抱くな。過剰期待。渦状気体。何言ったって堂々巡り。ホントは○○なんでしょぉ?とか訊かれたって知らねーよ。本当なんて何処にもねぇよ。あるなら俺が知りてーよ。分かってるなら教えろよ。アンタそんなコトもわかんないの?ってすみません分かりません。あなたどうやって生きてるんですか。とか何とか口にすればまた引きつった笑い声。治療するな。薬を渡すな。病人じゃない。ビョウキなだけだ。くだらない。ちょっと口が利けないだけだ。言いたいコトがなくなるだけだ。どこも悪くなってない。最初から壊れてるんだ。だから何も間違ってない。これはこれでいいんだって。プレミアとかついちゃうんだよ。喉から手が出るほど欲しがる奴がいるんだよ。嘘じゃねぇって。マジだって。違うって言ってるだろう。いや言ってない。呻き声とか啜り泣きとかパソコンのキーを叩く音とか。その意味がお前に分かるのか。意味なんか分からない。じゃあ勝手に呼ぶんじゃない。知ってるものだけ当てはめるな。はみ出したものを切り捨てるな。ゴミはゴミ箱に。スクラップは廃棄場に。リサイクルはできません。不足分は各自で補え。根本的に欠如してるならどうしようもないから諦めろ。


「これが僕のところに送られてきた手紙です」
「手紙なの、これ?」
「分からないけど、たぶん、脅迫状じゃないかと思う」
 キョウハクジョウ、と彼女は繰り返した。その発音は、脅迫状と言うよりはむしろ強迫状に近くて、なるほどと思ってしまった僕がいる。