死んだ

 妊娠した妹がやってきて、「私の赤ちゃんをみんなで可愛がって欲しいの」と言いながら私のへそにチューブを差し込み、ごぼごぼと腹の中へ水を流し込んできた。あまりの気持ち悪さに「ちょっと何してんのやめてよ!」と叫ぶけれど、妹は「これでお姉ちゃんも一緒ね」と嬉しそうに微笑んでいる。その後ろでは弟が口から細い管を垂れ下げて突っ立っている。へそのチューブが引き抜かれて身動きが取れるようになっても、パンパンに膨れ上がった腹が重すぎてろくに歩けもしない。助けて助けてと喚きながらよたよたと2、3歩進んだところでへそから水が漏れ始め、それと同時に口からもがばがばと水があふれ出してくる。大量の水を数回に分けて吐き出しながら、その合間に「何とかして! 何とかしてよ!」と妹に向って叫んでいるつもりで妹の姿なんか見えていない。視界に入った妹の医者らしき女性(だって白衣を着ていた)に「助けて! 元に戻して!」とすがりつくと、今度は医者のほうがうろたえて「そんなこと言われても、こんなことになるなんて」とか何とか言いながら医療器具をあさり始めた。この医者は危ない、と私は思うのだけれど、他にすがれる人間がいない。医者の狼狽が甚だしいので「ねえ、何でもいいからとりあえず落ち着いてやって! 痛いことするんだったら麻酔打ってからにして!」と声を掛けると、医者は注射器を私の首筋に突き刺したようだった。自分の首筋は見えないからよく分からなかったけれど、私はひどく嫌な予感がした。たぶんコイツは失敗する。そう思った瞬間、頸動脈が圧迫されるような感じと、血液が首から上に集結するような感じと、顔が膨張するような感じがいっぺんにやってきて、息ができなくなった。頸動脈だ。死ぬ。もう仕方がない。と私は思って、それから、でもこれはきっと夢だ、夢に違いない、と考えた。水の代わりに赤い液体の噴き出しているのがちらりと見えて、そのまま視界は暗転した。


 というような悪夢を毎日のように見ています。昨日はのどに蜘蛛が詰まって眼を覚ましました。夢の中であんまり必死に生き延びようとするものだから、実際に死にかけてもあんなふうに慌てふためいて生きようとするんだろうか、と不愉快な気持ちになったりもします。