スパイラル―プ

 デジャヴ。いつか見たような夢から覚めて、ああなんだっけあの夢、と考える。ついさっきまで見ていた夢もおぼろげにしか思い出せず、結局それが何だったのかよくわからないまま伸びをして起き上がる。今何時だろう? ケータイを開いてみるけれど電源は切ってある。デンワキョーフショー。電源を入れて、時計を確認して、新着メールの問い合わせをして、すぐまた電源を切る。これでもうどことも繋がらない。そんなふうに窓を閉めて鍵をかけてカーテンを引いていたことが、前にもあったような気がする。あの時と同じかも知れない。と、思ってはみるものの、あの時がいったいどういう時だったのか、今に私にはよくわからない。生暖かくもったりとしたこの部屋の空気。なんだっけ、ほら、あの、あれに似てると思うんだけど。と、私はひとりで考える。考えるふりをする。お腹が空いているようないないような、でも何か食べたいような、この感じも知っている。とにかくパスタを茹でよう。
 パスタの茹であがったナベを覗く。メガネが曇って何も見えない。「メガネがあっても何も見えやしない」と言いながらメガネを外してみるけれど、やっぱり何も見えやしない。ナベの中にあるのはほんとうにパスタなのか? ざるにあげて、皿にあけて、サラダを乗せて、ごまドレッシングをかける。パスタの熱でサラダが生ぬるくなっていく。ドレッシングの味に飽きる。めんつゆを足してみたら、今度はこの前作ったたまご丼と同じような味になった。ああ、知ってる。この味もよく知ってる。空になった食器を流しに運ぶ。さて、何をしよう? 頭に浮かぶメロディを歌いながら考える。「いいんだ、きょうはもういいんだ」歌を聴こう。
 パソコンを立ち上げて、目当てのCDを探そうとした。探そうとしたのだけれどめんどうになった。いいんだ、きょうはもういいんだ。何をしよう? ゲームをしよう。どのゲームを? さあ? なんでもいいさ。ああまたくり返してるのか。この前の休みもこんなふうに――そうだっけ? よくわからない。窓から入ってくる暖かな光がとても心地悪い。