マルとペケ

僕はいつまでここにいるんだろう? どうして歩くのをやめたんだっけ。真っ直ぐ。僕の前に続く道は真っ直ぐ。どこまでも伸びているように見える。見えるだけで、ひょっとしたら、すぐに崖っぷちへたどり着いたりするのかも知れないけれど、でも、見ているだけ…

近況

突然歩けなくなる夢をみて目を覚ましたら、丸くなって寝ているせいで足が痺れてた。 カップいっぱいに注いだカフェオレを飲もうと思ったら虫が溺死してた。 寝坊してプラスチックゴミを出し損ねた(2週め!)。 自転車で障害物を避けたらその向こうにあった“…

書けた!

ショパンのノクターンをBGMに、1.5時間に1回くらいはソリティアで休憩しながら、チョコレートを1.5箱とカフェオレを約1Lとその他もろもろのお菓子を消費しつつ、おおむね3日で書いた『論理哲学論考』の20枚論文(400字詰め換算)は、きっと論文的にひどい出…

電子レンジ

壊れた? ほんとうに壊れてる? 電気はつく。でも反応しない。使えない。そう、そうだ。電子レンジは壊れたんだ。どうしてだろう? 古かったから。あるいは、僕が壊したのかも知れない。よくわからない。 「冗談じゃないよ」と誰かが言って、それはたぶん僕…

“身体だるくて逆に眠くないね”

あ、やべっ、と思って飛び起きる。目覚まし代わりのケータイを開く。まだアラームが鳴ってないどころか夜中の3時だったりする。あと5時間は眠れる。自分の「うわぁ寝過ごした!」感は何だったんだ、と思う。とりあえず何か飲もうと立ち上がってみたら、異様…

とりあえずメモの続きのメモ

どうやら私は生き延びたようです。何の感慨も安堵感も喪失感もなく、昨日が終わって今日がやって来て、おそらく明日もやって来るのだろうというように、私は8月31日の朝を迎えました。 タバコを1.5箱吸い、DrPepperを飲みながらカントリーマアムを2/3個かじ…

とりあえずメモ

彼は私を殺しに来るらしい。お可笑な人。でもどうしよう? 私に失望して、殺す気をなくしてしまうかもしれない。それは喜ばしいことなんだろうか。死にたいワケじゃないけれど……窒息死は苦手だなぁ、と考えながら、卵の賞味期限を気にしている。その前に死ぬ…

メモり

怯えることと、ぬいぐるみのことと、ポーズのことを考えて、すこし泣いた。ちょっと混乱しただけだよ、と彼は言った。

電話

今日僕は驚くほどまともな人間と話をした。話をした、と言っても、僕のことだからほとんど相槌を打っていただけなのだけれど。とにかく彼はすごくまともで、すごく好いヤツだった。実際に話をしたのは今日が初めてで、彼が思ったよりもずっとおしゃべりな人…

大学生的日記

私にしては珍しく現実的な話をします。というか、ここで「現実的な話をします」と言い始めていることがすでに現実からの逃避行為であるような気もしますが、ともかく、何の話かって言うとレポート課題の話です。なんて大学生らしいんでしょう! と、書いたと…

中二的破壊衝動

私の口をこじ開けて言葉を掘り出すのはやめてください。私を語りたいならば勝手に語ればよろしい。私にとってそれは「私」という何かの「ラベル」に過ぎません。そしてその「ラベル」こそが、あなた方にとっての私であることだって、重々承知しています。そ…

古い箪笥の話

日常の会話からタグを拾い上げていくと必ず記憶にたどり着く。たどり着いた記憶には「嫌な」とタグが付いていて、僕はまたうんざりする。タグを付けているのが自分であることにうんざりする。結局のところ、外から入ってきた情報をすべて自分の内側に取り込…

the Rot Maker

その音を聞いたとき、僕はソファの上で仰向けに寝転がっていた。部屋には僕しかいなくて、たぶん、そもそも、家の中には僕しかいない。なんとなく目を覚ました僕は、そのままなんとなく天上を眺めていた。そうして、やっぱりなんとなく、時計の音を聴き始め…

世界の真ん中のすみっこで

何も、語りたくなくなる。僕の語ることを理解する人間なんてひとりもいないし、僕はいつだって誰かの語る言葉を理解できずにいる。それは、僕や誰かの頭が悪いからとか、理解力がないからとか、共感能力が乏しいからとか、そんなくだらない理由によるものじ…

はなし相手

あ、たいへんだ、今チョコレートがしゃべった。え? 聞こえなかったって? おい君、ひとの話はちゃんと聞くもんだよ。ほら、怒ってるじゃないか。何がってチョコレートだよ。怒ってるだろ。分からない? まったく君ってヤツは、薄情な男だな。いいかい、チョ…

ケース4:

彼は僕に謝った。彼によると、僕はひどく不快な思いをさせられて、人格攻撃と侮辱を受けていたらしい。けれど、僕はそんなことちっとも気が付いていなかったので、なんだかとてもちぐはぐな感じがした。それよりもむしろ僕の「誰に対しても同じ」スタンスの…

ケース3:

「そんなに気ぃ使わなくていいよ」と彼は言った。仲良くなりたいから、気を使われるのは嫌だ、と。「これがふつうなんです」と僕は答えた。いつもそうしているように。彼は「じゃあ敬語でしゃべるのやめてよ」と言った。僕は「敬語のほうが楽なんです」と答…

ケース2:

学友と話していたら、同じ講義で知り合った女性に「あなたのカレ、おしゃれねぇ」と言われた。「私のじゃないですけどね」と笑って答えた。彼女は私に向って「でも、いつも仲良さそうにしてるじゃない? カレなんでしょう?」と言った。「違いますよ。学科が…

ケース1:

彼は僕を褒めた。元気がよくて明るくて素直だと、褒めた。頑張り屋でまじめで、愚痴も言わずに一生懸命仕事をして、俺には真似できない、と、褒めた。そして、俺には真似できないから、という理由でいなくなった。 彼はネガティヴだけれど感情の起伏は激しく…

もういいんだ

何か言おうとして口を開いたのだけれど、その時にはもうこちら側にいた。残っているのは「もういいよ」という言葉だけ。どういう文脈で、誰が、どんなニュアンスで言ったのかは、ちっとも思いだせなかった。あちら側に置いてきてしまったのだ。こちら側の僕…

日常的な走り書き

コーヒーを飲んでチョコレートを食べながら、僕は考えた。名前も知らない彼女について。 彼女と会ったのは今日が初めてだ。大学の講義が終わって学友のひとりと話をしていた時、彼女のほうから声をかけてきた。たぶん、僕らが講義中の私語について話をしてい…

スクランブルドエッグ

ぼんやり彼女の顔を眺めていると、突然、彼女が「怒ってるの?」と訊いた。僕はぎょっとして、ズレかかっていた焦点を彼女に合わせ直す。彼女の丸い目が僕を見ていた。こんな生き物をどこかで見た気がする。動物園か水族館か、ひょっとするとゲームのキャラ…

鈍く転がり

曇天。雨が降るかも知れないと思わせるような空なのに、空気はちっとも冷たくない。暑くもなく、冷たくもなく、ぬるくもない。空気があるということすら感じられない。けれど、まあ、あるんだろう。どうせなら、痛いほど冷え切った、たとえば針みたいな雨で…

黙れホントに

そうか、最低ってのは私のためにある言葉だったのか、と思ったけれど私のための言葉など用意されているはずもなく、とりあえず、――ほうがいいよ俺マジで。

メィ(羊?)

「うるさい黙れ!」と怒鳴りたくなる。けれどそれは、あまりにも頻繁に起こることだから、いまさら怒鳴る気にはなれない。怒鳴るタイミングを逃し続けているのかもしれない。あるいは、怒鳴ることの無意味さを、僕は知ってしまったのかもしれない。 飼い犬が…

僕は笑う 楽しいから? 哀しいから? 楽しいのだという主張 哀しみの裏返し なんだっていいんだ 好きにしてくれ 泣きたくないから笑うだけ それだってただの詭弁だ 残ってないよもう何も ジャンプしても 逆立ちしてもさ でもアンタ 信じないだろう 言葉なん…

キレハシ

「人殺しのくせに」と言われたのでソイツを箱にいれて粉砕したら芸術的なオブジェが完成。しかし芸術とは時に滑稽なもので、だからかどうかは知らないけれど僕はすこし、いやカナリ、笑った。そんな夢をみていたのは起きてる時だったか寝てる時だったか、も…

雪の降らない朝に

学友が「ギター貸してください」と言ってきたので、大学までギターを輸送。ギターなんて滅多に持ち歩かない私は、まだあまり馴れていない人と会話をする時の言葉選びみたいに、ギターの置き場所選びに苦労する。 乗ったバスは通路の狭い、ふたり掛け席の多い…

犬は啼いた

さむい冬の夜に犬は啼いた。「わん」でもなく「おんおん」でもなく「アオーン」でもない。しかし啼いた。空にはオリオンの三ツ星が輝いていたかもしれないし、向かいの家では植木に巻き付けられた電球がチカチカしていたかもしれない。けれど、犬の眼に映っ…

すべての赤鼻に捧ぐ2

それから私は暖炉に火を入れてウッドチェアに腰掛けた。真っ赤な炎を見つめていると、その炎が私に燃え移るような気がしてくる。私の中には一本のマッチ棒があるのだ。火が点けば数十秒で燃え尽きてしまうような、ごく普通のマッチ棒で、私の中にあるのはそ…