声の話

もしもし、もしもし。
私の声、聞こえますか。貴方の耳に、届いてますか。


貴方の返事、聞こえません。私のほうを見もしない。
頷くだけでも構わないから、何か応答願えませんか。
やっぱり聞こえていないのかしら。


そこで私は考えます。
私本当に話してる? 私の声、ちゃんと出てる?
自分にはしかと聞こえます。


それでも私は考えます。
ひょっとして、在るんだろうか、見えない壁。
だから貴方に届かない。空気の振動、伝わらない。
でも貴方の声は聞こえるわ。


やっぱり、声が出ていない?
出してるつもりになっているだけ。
口をぱくぱく、もごもごさせて、貴方に届けと願うだけ。
だからなんにも、返って来ない。
そうなのかしら。どうかしら。


声を出すのも、怖くなる。
出そうとするのも、怖くなる。
出ているのやら、いないのやら。


私はここに、いるのやら、いないのやら。