餓えの話

彼はあらゆるものに餓えている。
だから何でも食べる。
食べるために手に入れる。
手に入れたはしから食べてゆく。
食べたら無くなる。
また餓える。


繰り返し、繰り返し。


彼が今、求めて已まないのは、たった二文字の哀しい言葉。
其れさえあれば、つらい事もなくなるのだと、彼は言う。
傷の痛みも、悲しみも、餓えも。
全て消えるのだと、彼は言う。


「慣れ」


彼には慣れる能力がない。