夜の話

とても静かな夜だった。
たくさんの人がいるのに、誰も、何も言わない。
僕もその中で、黙って座っていた。


どのくらいの時間が経ったのかわからないけど、
相変わらず、とても静かな夜が続いていた。
でも、少しずつ人が減っている。
みんな何処へ行くんだろう。
何処へも、行けやしないのに。


僕の隣で、誰かが立ち上がった。
真っ直ぐ前を向いたまま、視界の端で、その誰かを見る。
息を吸って、口を開いたようだった。
でも、夜はとても静かなまま。
誰かは叫んでいるようだった。
僕はただ、視界の端で、その誰かを見つめていた。


とても静かな夜だった。
とても静かな夜なのに、僕はずっと、イヤホンをしていて。
いつの間にか、ひとり、公園のベンチに座っていたんだ。