僕と私とアイツの話



私:最も現実的かつ理想主義的。理想の実現に自らの全てを捧げたいと願う。
  僕に憧れながらも私の道ではないことを知っている。


僕:単体で存在するにはあまりに不安定。存続のためには私かアイツを必要とする。
  現実からの脱却という夢そのもの。


アイツ:危険因子。僕を介して私に干渉し、隙在らば僕に成り代わろうとする。
    発作的で攻撃的。




私の主張は最終的にある一点に辿り着く。
つまり「私たちは統合されて然るべき」ということ。
僕は私を好いているから、「その通りかも知れない」と言う。
しかし次の瞬間には忌まわしきアイツの声を聞くことになるのだ。


アイツは私の心に迷いがあるのを知っている。


私の主張する「統合」とは、結局僕とアイツのほとんどを私に寄与する形になる。
僕とアイツは現実との繋がりを完全に遮断され、事実上死を遂げる。


私の迷いは其処にある。
私は僕に対して強い憧れを抱いているために僕の死を恐れる。
また、不安定な僕は統合されたとしても、
発作的で攻撃的なアイツが果たしてそう簡単に消えるだろうか?


アイツは僕を介することでしか私に干渉できず、
私に干渉することでしか現実に干渉できない。
私もまた、僕を介することでしかアイツに干渉できない。
つまり僕は現実とアイツの間で壁の役割をしているのだ。
もし、その僕が私と統合され、アイツが残ってしまったら...?
今度はアイツが私に直接関わることになるだろう。
そうなれば、アイツが現実に与える影響も大きくなる。


アイツは僕に囁く。


「今までずっと一緒に居たのに、何だって突然そんなことを言い出すんだ?
 あんまりじゃねぇか...俺だって生きている、そうだろ?」


僕は現実のことなんてよく分からない。何故私とアイツの仲が悪いのかも分からない。
みんな仲良くしてくれたらいいのにと思っている。
私のことは好きだし、アイツのことは可哀想だと思う。
どうして上手く行かないんだろう...