扉の話

 ああぁー、まただよ、この感じ。嫌になるね。まったく! 扉の開け方を忘れたみたいな、この感じ。いつの間にか鍵が無くなってる。どこに置いたか分からない。いつもあるはずのところに無いんだから、これはもうどうしようもない。鍵はきっと、カミサマの手の中へ。ようこそカミサマ、僕らの国へ。僕らのカミサマ、僕らの王様、道化の王様! ウェルカム!!
 ああぁー、ほら、また聴こえた! 聴こえただろ!? 今の音! 世界が嗤う音だ。ゲコゲコゲコゲコ。蛙か? 下戸か? 嫌ならいいじゃん、飲まなくても。とは言え、なかなか理解はされないよね。世の中は不条理だ。でも大丈夫、僕らには王様がついてるから。ウェルカム!! ウェエールカム!!!
 例えばね、薄い膜の向こう側で、誰かが嗤ってるとするよ。それをアンタは、どう思う? 気持ち悪い? ムカつく? 自分とは関係ない? それ! それそれ! 自分とは関係ない。世の中の7割はその言葉でできてるね。間違いないよ。うん。だってそうだろ。実際問題。自分とは関係ないことだらけ。友達の友達の親戚が転んで足首捻挫したとか、ホント関係ない。僕の人生に何の影響も与えない。せいぜい「あー、そりゃあ、大変だねー」ってひと言口にする程度。
 その言葉が何の意味も持たないことくらい、友達だってわかってるはず。それでも僕はそのひと言を口にする。かも知れない。しないかも知れない。ま、どっちだっていいね。どうせ僕には関係ないことだし。
 僕にとって重要なことと言えば、そう、鍵の在り処! いや、違う。扉の開け方? 鍵なんか無くたって開くはず。そうだ。そうそう。思い出してきた。鍵なんてない。でもどうやって開けるんだったかな。思い出せない。ヘルプミィ、カミサマ! カミサマって何だっけ。思い出せない。まぁいいか、カミサマなんて、僕には関係ないことだし。
 あれ、何かループしてない? このままじゃ終わらない。どこまで行ってもエンドレス。流れを断ち切れ。シザーハンズ。バルタン星人。ちょっと苦しい。無理がある。無理はよくない。流れに乗ろう。どこまでも流れていこう。行き着く先は。扉の前だ! ハロー、カミサマ、ウェルカムバック!!