僕と人間の話

「全部、嘘だったんだ。」
 女の子の顔はこちらを向いて、その眼は何処か遠くを見ていました。とても青い眼。
「いただきます。」
 女の子はいなくなりました。僕はまたひとりになりました。


 僕は人間が大好きで、人間が好きな自分も大好きです。でも、僕と一緒にいるとみんな不幸になってしまいます。それに気付いた人はさっさといなくなってしまうけど、気付かずに可哀想な目に遭う人もたくさんいます。だからやっぱり、僕は僕が嫌いです。大好きなみんなを不幸にしてしまうから。
 こんな風に、いつも何かを壊しながら進んでしまうのが僕なのです。壊して作ってまた壊す。本当に進んでいるのかもよく分かりません。


 次にやって来たのは男の子でした。男の子は恐る恐る僕の顔を覗きこんで、「こんにちは。」と言いました。
 僕らはそれからしばらくお喋りをしました。とても楽しい時間でした。太陽が真っ赤になって山の間に降りて来ると、男の子は立ち上がって言いました。
「楽しかった。また来るね!」
 男の子が手を振ったので僕も軽く手を振ると、男の子は横っ飛びに吹っ飛んで、岩の壁に激突しました。ぴくりとも動きません。男の子を吹っ飛ばした手で穴を掘り、男の子を埋めました。そこらに転がっていた骨を埋めた場所に突き立てます。埋めた場所が分からなくなると困るから。
 僕はまたひとりになりました。