分岐点――すなわち前置き

 時々、いや、結構な頻度で、過去とさよならしたくなる。今まさにそれ。特別何かあったわけでもないし、自分が嫌いなのはいつものこと。キッカケにもなりやしない。ただ何となく、この空間を白紙に戻したいと思っただけ。
 そんな風に思うのは簡単だけど、今までさんざん書き散らかしてきたものを全部きれいに片付けるのは、非常に骨の折れる仕事。それに、この紙くずを全部ゴミ箱に捨ててしまったら、私の記憶も一緒に捨てられてしまうだろう。こんなくだらない文字の集まりでも、今の私が過去の私と繋がっているためには、必要なものだ。だから捨てられない。本当は、過去とさよならなんてしたくない。この矛盾が私を支えている。生きていること自体、矛盾なのだから。
 そういうわけで、今日からきっとこの空間の姿は変わるけれど、過去は過去のまま置いておくことにする。