魚の骨のような、ニンゲンの言葉

 何処かで見た顔のニンゲンが、何か言いたそうにこちらを見ていた。「何?」と聞くと、相手は口をもごもごパクパクさせる。けれど、いっこうに言葉は出てこない。どうやら喉に引っ掛かっているらしいのだ。仕方がないから、言葉の代わりに音楽を聴く。音楽には、誰か別の人の言葉が乗っていて、リズム良く私のところへやってくる。そいつを、今度は私が送り出す。これは私の言葉ではないけれど、私の言葉に近いものを、どこかに届けてくれそうな気がする。だから歌う。歌っているうちに、喉につかえた言葉も飛び出してくるかも知れないから。だから、歌う。
 もう少しで、出てきそうなんだけど、難しいな。焦っても仕方ない、か。