雨が降ったから

 駅のロータリ。クスリ。トローチ。トートロジー。1イコール1。AイコールA。私イコール、私?
 私の口で言葉を話す。私の口が言葉を話す。私の口で、言葉が話す。私は言葉に喋らされている。私の言葉、ではなく、言葉の私。それに向かって私は話す。堂々巡り。独り言。意味だろうか。音だろうか。とんとん。私は今も私だろうか。
 私ではなく、僕でもなく、俺でもない、自分になりたい。けれど、うまく統合できなくて、結局いつもバラバラだ。欠片が積もって山になる。それを無理矢理「自分」と呼ぶ。私は僕で、僕は俺。俺は私だけれど、僕でもある。じゃあ私は――。本当に同じ私だろうか。
 雨に濡れていたい気分。でも、時間がそれを許してくれない。時間は現実の味方をする。私のアタマは夢物語。はしっこのすみっこのかどっこにチョロっと残った歯車が、私を現実と繋いでる。私は今どちら側にいるのだろうか。


 ――やめた。帰ろう。