夜道を歩く

 すこし遅めの昼食を食べたら、すこぶる気分が悪くなった。本を読んでもおさまらない。仕方がないからショパンを聴いた。今度は何だか泣きたくなった。誰か僕のためにノクターンを弾いて欲しい。そんな気持ちにすらなった。植え込みの樹に話し掛けようにも、話すことが何もない。うぅん、と大きく伸びをして。突然たこ焼きが食べたくなった。たこ焼きを買って帰ろうと、僕は立ち上がり、大学を後にした。
 たこ焼き屋が閉まっていたから、コンビニに寄ってみた。そこにもたこ焼きはなかった。何だか悔しかったから、家まで歩いて帰ることにした。上り坂を1時間半。途中のコンビニでたこ焼きを買った。どうしてだか海老カツバーガーも買ってしまった。両方温めて貰ったから、海老カツバーガーから食べた。するとまた気分が悪くなって、たこ焼きなんて見るのも嫌だ。
 僕は歩きながら歌を歌った。3曲ほどごちゃまぜにして、歌いながら歩き続けた。夜も遅いから、すれ違う人もいない。と思って安心していると、後ろから自転車が来たりする。油断大敵というヤツだ。歩きながら考えた。こんな時間に、コンビニの袋をぶら下げて、ワケの分からない歌を歌いながら、ひとりでぺたぺた歩いてるなんて……僕は可哀想なヤツなのだろうか。猫を見かけたから挨拶したら、奴さん、一目散に逃げてった。僕だって、逃げ出したい気分なのだ。
 帰ったらまずシャワを浴びる。それから、レポートを印刷する。その後マンガを一冊読んで、眠れそうだったらすぐ寝よう。そして明日は早起きする。たこ焼きは、明日の朝、食べる気になったら食べてやろう。ならなかったら、大学へ持って行く。完璧なスケジュール。あつい。ああ、あついなあ。もう、夏か。