虫食む月

 今日は満月。しかも月蝕だ。結構楽しみにしていたのだけれど、生憎のお天気で、月蝕は雲の向こう側。ついさっき空を見上げたら、雲がぼんやり光っていた。きっとあそこに月があるんだろう。見えたって仕方ない。消えるところが見たかった。
 まあ、それはそれとして。今日は満月。満月というと、あなたは何を思い浮かべるだろうか。ウサギの餅つき? オオカミ男? 月に代わって何とやら? そういえば、青い焼き菓子モンスターは満月を食べていた。ウサギごと食べたのだろうか。皿も食べるヤツだからな。なんて思ったりして、ファンタジィ。ファンタって確か炭酸入ってるよね。私は炭酸飲めないんだけど、近所の子が昔よく飲んでてさぁ、ファンタグレープ。そういや、グレープジュースって紛らわしい。ブドウなのか、グレープフルーツか。基本的にフルーツジュースはあまり好きじゃないけれど、ブドウならギリギリ飲める。でもグレープフルーツは苦すぎる。ジュースを頼むにも命懸け。って言うと流石にオーバーだ。でもまあ多少のギャンブル性は味わえる。
 話が逸れた。そう、満月だ。そして満月といえばオオカミ男なのだ。なぜって、私の曾祖父さんがオオカミ男だったから。つまり私にもオオカミ男の血が流れているというワケだ。だから、満月の日は調子が悪い。ただでさえ人間らしからぬニンゲンであるのに、満月ともなるともう、何者だか分からない。と言っても、流石に尻尾が生えてきたりはしない。人に噛み付いたりもしない。ただ、すこし、何と言うか、調子が悪い。
 生粋のオオカミ男ではないから、調子の悪さは満月の日に限らない。満月が近づいてくると段々オカシくなってくる。どういう風に、と言われるとこれがまた難しい。色々なのだ。けれど、数学的計算と、経験的直感に基づいて結論付けるならば、つまるところ情緒不安。些細なことに腹を立てて、色んなものを引掻いて回った挙句、哀しくなって泣き出すみたいな、そんな感じ。もちろん泣きながら歌も歌う。歌ってるうちに笑い出す。笑ってるうちに、今度は自分を噛み殺したくなってくる。そんな感じ。あくまでも、そんな“感じ”だ。つまり、オオカミ男的に例えてみたってワケ。……あまり上手くなかったと思う。
 ところで、オオカミ男ってファンタジィ? 時々鉄の味が恋しくなるのは吸血鬼? お墓が欲しいとは思わないけれど棺で寝てみたいとは思う。コウモリとも話してみたい。アイツ等忙しく飛び回るから、ゆっくり話も出来やしない。飛び回ってないコウモリは、二種類しか見たことがない。オーストラリアのフルーツバットと、プールに浮いてた赤ちゃんコウモリ。前者は言葉が通じなかったし、後者は話せる状態じゃなかったのだ。動物園にでも行ってみようか。コウモリっているのかな。
 いつまでたってもまとまらない。オチらしいオチがつけられない。まったくこれだから満月は。と、満月のせいにして。