ラファットミィ

 いいんです。いいんですよ、刺されても。それでも私は笑っていたい。嫌われたって、憎まれたって、笑っていればいつも幸せ。ひっくり返したオモチャ箱。出てくる出てくる、ガラクタの山。私はいない。何処にもいない。


 電車の窓から見える明かりは、右から左へと流れていく。きれいだとは思わない。けれど、何となく眼で追ってしまう。疲れているな、と思う。そう、疲れているのだ。こういう考えが浮かぶ時ってのは。向かいの席に座っている男も、疲れた顔で眠っている。サラリーマンだろうか。私なんかよりずっと疲れる仕事をしているんだろう。みんな、疲れているんだ。「ご苦労様」と、誰にともなく。
 私なんかよりずっと、という言葉をよく使う。と思う。だからどうってこともないのだけれど。私なんかよりずっと苦しくて、私なんかよりずっと疲れている人が、たくさんいる。そう思うことで、自分の負担を軽くしているのかもしれない。でもたぶん、実際、たいした重さじゃないんだ。そのことを改めて認識することで、自分の弱さとか、くだらなさとかを、笑い飛ばそうと……馬鹿馬鹿しい。やっぱりちょっと疲れてるな。こんな考えが浮かぶなんて。


 どうしてでしょう、うまくいかない。そんな事もありますよ。とりあえず笑ってみましょう。気にしないフリ。落ち込まないフリ。フリだっていいじゃないですか。笑っていればいつも幸せ。だって私は道化ですから。笑ってください、笑ってください。