ソウクール

 「楽しそう」だと、人に言われる。楽しいですよ、と私は応える。「楽しそう」だと言われることが、一層私を楽しくさせる。


 人間とは愚かなもので、明らかに自分には向いていないコトでも、時々やってみたくなるものらしい。チャレンジして、失敗して、ああやっぱりと呟いて。自分ってマヌケだなと、ちょっと冷静になってみたりもする。そういう姿って、実際とてもマヌケで、指差し笑われたりなんかするかも知れない。けれど、そんな風に笑ってるヤツだってマヌケなことをしてしまうのだ。きっと。それは、因果応報なんかじゃなく、誰だって少なからずマヌケであるというだけのコト。
 そのマヌケを繰り返してしまうのが道化というヤツなのだ。失敗したり足掻いたりしている内に、段々それが楽しくなってきてしまう。足掻いてる自分ってクールかも、なんて思ったり。そんな馬鹿なコト考えてる自分ってやっぱりマヌケだと思ったり。最終的に、思考は外へ向いて行く。道化は舞台で踊るのだから、観客のコトを考えなくては。
 一番身近な観客は自分であると考える。自分は道化をどう思う。愚かでマヌケで滑稽だ。同時にクールでチャーミングだ。そして時々、少し哀しい。それってつまり人間そのもの。誰だって、少なからず道化なのかも知れないね。ともかく、私はそんな道化が大好きだ。だから道化のままでいたい。道化な自分を笑っていたい。オッカシイよね、コイツ!というワケだ。
 一番近く、舞台の上から、舞台で踊る道化を見ている。それほど楽しいコトってちょっと他にない。だから私はいつも「楽しそう」でいる。「楽しそう」でいる私は、そのまま道化そのものだから、観客を一層楽しませる。私は一生舞台で踊る。


 そんな生き方って、とってもクール。だから、舞台で踊る人を見るといてもたってもいられない。一緒にワルツを踊りませんか。なんて、踊れもしないのに言っちゃいソウ!