自転と公転と嘘とバランス

 今日も地球は回っている。重力と遠心力の絶妙なバランスによって、僕は大地を踏みしめている。頬を撫でるのは冷たい風。地球の真ん中に立ってみたい。自分を中心に世界が回っていく感覚。風の無い場所。だけど、回転はめまぐるしい。すぐに酔ってしまいそうだ。
 地球の真ん中から少しズレたトコロで、僕は立ち尽くしていた。冷たい風が頭を冷やす。冷えた頭を回転させて。
 バランスが崩れたらどうなるだろう。吹き飛ばされるか、潰れてペシャンコ。どっちがマシかな。どっちも御免だ。けれど、もし、地球が今のバランスに疲れてしまって、もうどうしようもないって言うんなら、僕は吹き飛ばされてもペシャンコになっても、構わないと思う。


 嘘だ。と、私は呟いた。右手にはミルクの入ったグラス。左手には便箋。そこには、見るからにきれいなココロがこもっていそうな、丁寧な文字が並んでいる。手紙の主が、何を言おうとしているのかは、さっぱり分かりやしなかった。ただ、最後の一文が何となく気に食わない。
 たとえ相手が地球であっても、誰かの勝手な都合で自分がダメになっちまうなんて、許せるワケないだろう。今のこの絶妙なバランスは、地球自身によってのみ、保たれてきたものか? アンタだって、それなりに努力して、バランスとって来たんじゃないか? それを突然放棄されても、構わないなんて、思えるのか本当に。
 やっぱり嘘だ。と、私は呟いて、グラスの中の液体を喉に流し込んだ。