ちぐはぐ

 書けない。潰れた喉に言葉が全部引っ掛かっているみたいだ。吐き出したいモノがあったのに。ため息すらつけないほどに、僕の喉はボロボロだ。喉がだめなら、涙くらい出るんじゃないかと思うけど、それも案外難しい。
 ショパンを聴くと、哀しいような懐かしいような、とても冷たい気持ちになる。ショパンは、僕の心を、静かに内側へ引っ張っていく。引っ張られた心は空洞を作る。僕はその空洞を覗き込みたい衝動に駆られる。でも、よく見えない。その空洞を覗けるのは、涙で濡れた瞳だけなのだ。僕の眼はカラカラに乾いていて、キシキシと音すら立てそう。だから、僕は、その空洞に耳を澄ます。


 だめだ。やっぱり続かない。咳き込んでばっかりで、全然言葉が出てこない。今日はもう諦めよう。陰鬱な気分を吹き飛ばすように、口の両端を吊り上げ眼を細める。にっこりと笑ってみると、どうしてだか涙が溢れてきた。